GNOME プロジェクトでは数百のバグを修正し、ユーザからの要望に基づいた改良を行いながら、GNOME 2.30 においても引き続きユーザとそのユーザビリティに重点を置いたものになっています。非常にたくさんの改良が施されているため、全ての変更と改善点をこのページだけに列挙することはできません。そこで、今回リリースされた中でユーザの立場に立ったワクワクするような機能のいくつかにスポットを当てて紹介することにします。
GNOME 2.30 では GNOME ファイルマネージャの Nautilus を更新しました。Nautilus には多くのユーザインターフェイスの変更が加わり、新しいスプリットビューモードが加えられました。また、デフォルトではスペイシャルモードではなくブラウザモードで動作するようになります。
Telepathy コミュニケーション・フレームワークを使用して作られている、GNOME のインスタント・メッセージング、およびコミュニケーションのためのアプリケーション Empathy にはユーザのコミュニケーションに役に立つ新しい、重要な機能がいくつも追加されました。
Empathy ではアカウントの接続に失敗したときにコンタクトリストに情報バーを表示し、再接続の試み、またはアカウントの設定を編集を容易するボタンに注意を向けるようになりました。
友達との会話中にファイルをコンタクトリストやチャットウィンドウにドラッグ・アンド・ドロップすることで、ファイルを送ることができるようになりました。
Empathy の IRC 機能が更新され、/join や /nick などの一般的な IRC のコマンドがサポートされ、また、パスワードで保護されたチャンネルに参加できるようになりました。
他の更新としては、Facebook チャットを簡単に追加し設定できるようになったこと、友達と会話してるときに簡単に文字列を見つける手助けとなる検索ウインドウを表示するようになったことがあります。
Tomboy メモ にもたくさんの更新があります。手動で同期する代わりに、バックグラウンドであなたのメモを自動的に同期できるようになりました。Tomboy の設定画面中で Tomboy がどの程度の頻度で自動的に同期するのかも設定できます。
Tomboy の起動時間は劇的に改良され、ほとんど一瞬で起動するようになりました。
コピー・アンド・ペースト機能が改良され、メモからリッチな HTML を他のアプリケーション、OpenOffice.org、Evolution などにコピーできるようになりました。情報をペーストしようとするアプリケーションが HTML を理解できれば、メモの書式が維持されます。
Tomboy の他の改良点としては、Microsoft Windows 7® のジャンプリストのサポートがあります。タスクバーや Windows のスタートメニューに Tomboy がある時に動作します。Tomboy でのメモの名前変更も改良され、より安全に変更できるようになりました。メモの名前を変更する際に、他の Tomboy のメモ中にあるリンクが間違って変更されないよう、どう処理するのかを利用者が制御できるようになりました。
GNOME System Tools は、コンピュータ上のユーザの管理を簡単かつ安全にできるよう、多くの改良がなされました。GNOME System Tools は PolicyKit を認証に使うようになり、ユーザやサービスを管理するためのアンロックボタンを削除しました。
ユーザを作成するダイアログが改良され、新しいユーザの姓名のみを入力すると、自動的にユーザ名を提案するようになりました。アカウントを作成するとすべてが「すぐに動きます」! 新しいユーザのホームディレクトリを暗号化するサポートも追加されました。
管理権限を間違って失ってしまうことがなくなりました。パスワードを変更する前に現在のパスワードを尋ねるようになり、キーリングや暗号化されたホームディレクトリが壊れたりしなくなりました。ユーザアカウントを削除する時に、ユーザのホームディレクトリを削除する機能はオプションになりました。
既存のユーザの管理では、特殊でわかりにくい権限から選択するのではなく、特定のアカウントの種類から選択できるようになりました。これによって他のユーザの権限を追加したり削除したりするのが簡単になりました。
時間と仕事を記録していくタイム・トラッカー アプレットには多くの改善点があります。
パネルのアプレットに加え、まったく新しいスタンドアロンモードが作成されました。ディストリビューションにもよりますが、タイム・トラッカーは GNOME メニューの アプリケーション ▸ アクセサリ ▸ タイム・トラッカー にあります。
アクティビティのレポートを見たり作成するのが改良され、アクティビティにタグを作成できるようになり、アクティビティをいろんな切り口でフィルタして概観することができるようになりました。
Evince ドキュメント・ビューアでは印刷機能が改良されました。ページ設定が印刷ダイアログに埋め込まれ、拡大縮小のオプションをサポートするための新しいタブが追加されました。
Microsoft Windows® 用 Evince で印刷、PostScript とコミックブック形式がサポートされるようになりました。
Evince に追加された他の機能としては、色の反転モードの追加、プレゼンテーションモードの更新、PDF の添付ファイルへのアノテーション、リモートファイルのサムネイル作成のサポート、といったものがあります。
Epiphany ウェブブラウザは新機能の追加だけでなく、たくさんのバグとリグレッションがフィックスされました。
Epiphany では gnome-keyring によってパスワードを記憶することができるようになりました。
Epiphany に、Flash や Java など、すべてのプラグインを有効にしたり、無効にしたりできる新しい設定オプションが追加されました。壊れた SSL 証明書を持つウェブサイトを表示すると、Epiphany が警告するようになりました。
Epiphany に復帰した機能は以下のとおり:
Epiphany は高度な設定項目を GConf で設定可能なオプションとして追加しました。User-Agent ヘッダやデフォルトの検索エンジンを直接 GConf で変更できるようになりました。
Epiphany-extensions にも新しいものが追加されました。html5tube は YouTube の Flash を HTML5 で置き換えて、Flash をインストールする必要がなくなりました。tab-key-tab-navigate プラグインは Ctrl+Tab でタブを変更することができます。sidebar 拡張は無くなりました。
GNOME デスクトップ用のリモートデスクトップクライアント Vinagre が SSH トンネリングをサポートするようになりました。これによって遠隔のマシンに SSH トンネル経由でよりセキュアにアクセスできます。リモートに SSH のアカウントが必要です。そうすれば、パスワードや安全に接続するのに知っているべき他の情報を入力することができます。
低帯域の接続を使ったクライアントへの接続は小さい色の depth の選択によって帯域幅を節約し、JPEG 圧縮を有効にすることによって簡単になりました。これらのオプションは Vinagre の接続ダイアログで利用可能です。
新しいリスナーモードが追加され、表示し、コントロールしようとしている遠隔のデスクトップがこちらへ接続するのを許可できるようになりました。これは遠隔接続がファイアーウォールやルータの向こう側にあり、通常の接続プロセスでは到達不能な場合に役に立ちます。Vinagre でリスナーモードを有効にし、自分の IP アドレスを接続しようとしている相手方に通知することで、リモートクライアントがこちらへ接続することができます。
前述した大きな変更の他にも小さな追加や (毎度おなじみの) 改善点をいくつか紹介します。